日本の携帯を高くしている真犯人は はてなユーザーの評価

グラフについてはブクマコメで突っ込まれまくっているので、私は今更突っ込まない。で、このグラフを直したのがこれらしい。

http://f.hatena.ne.jp/images/fotolife/l/leapfrog/20080207/20080207025808.gif

この通りだとすると、ドコモは11.3円/分、KDDIは13円/分、SBは16円/分、ということになる。これでもまだ差が大きいように思う。本当に自由競争が上手く働いていたらこんなに差は開かないはずだ。まかり間違っても「事業者の良心の問題」とやらで、こんな価格差になったりするわけはない。実際消費者金融の貸付金利なんかはどこも皆、出資法の上限金利29.2%のギリギリに張り付いていて、差はない。じゃあなんで携帯電話はこんなに差があるのだろう?

最初は補助金みたいなものなのだろうかと思った。というのも携帯電話サービスを全国展開しようと思ったら、まず全国各地に基地局やらなんやらで莫大な固定費やらランニングコストやらが必要なはず。でもこれはシェアによってかかるコストはほとんど変わりないはずだ。ドコモのシェアがSBの2倍以上だからといって、固定費が2倍以上ってことはないはずだ。だからSBは損益分岐点を通過するのがドコモに比べれば相対的には苦しいはず。だからそれを穴埋めする為の補助金みたいなものなのかなと思った。とりあえずアクセスチャージをwikipediaで調べるとこう書いてある。

アクセスチャージは、いわゆる電話サービスにおいて複数の電気通信事業者の網を経由する場合に、ユーザから通話料金を徴収する事業者がそれ以外の事業者に支払う網の利用料のこと。事業者間精算料金とも呼ばれる。

正確にはテラ銭みたいなものなのね。最後の方に次のようなことも書いている。

アクセスチャージの金額は、通常、電気通信事業者間の相互接続協定書の中で個別に定められ、その金額は非公開とされるのが原則であるが[2]、日本では2001年に電気通信事業法を改正し、一定の地域内で一定以上の市場シェア[3]を持つ事業者に対し、相互接続のための条件や料金等を定めた接続約款を作成・公開し、総務大臣の認可を得なければいけないこととしている(いわゆる「ドミナント規制」)。

「ドミナント規制」っていうのがある。これをグーグルで検索すると、こんな説明が書いてあった。

一定以上のシェアを獲得した通信業者に対して、総務省が行なう規制。特定の企業によって市場が支配されることで、競争が正常に行なわれなくなることを防ぐ目的で適用される。携帯電話事業においては、端末台数シェアが25%を超えた企業は「第二種指定電気通信設備」を持つと見なされ、様々な規制が課されることになる。たとえば、接続約款を総務省に提出し、公表しなければならない。他の事業者は、その接続約款に対して、改善すべきと思われる点に関して意見書を提出することができ、接続約款によって規定された接続料が適正なものではないと総務省によって判断された場合には、その変更を命じられることもある。

はい、これでアクセスチャージの価格差とドミナント規制の関係がわかりました。要するにドコモのようにシェアの高いところは、行政によってアクセスチャージを引き下げさせられるというわけだ。だからこんなに価格差あるわけだ。だとすると最初のリンク先の結論は事実と正反対だ。リンク先の論理はこうなっています。


ソフトバンクのアクセスチャージは高い

       ↓

だから日本の携帯電話代は高い

       ↓

だからソフトバンクを使うな 

完全に間違いだ。ソフトバンクのアクセスチャージが高いのはシェアが低いからだろうに。ソフトバンクのシェアが更に下がったら、ソフトバンクのアクセスチャージはもっと上がるだろう。もしくはドコモやKDDIのそれが引き下げられるかどちらかだ。ソフトバンクが嫌いで、知っててわざとやっとのかもしれないがお粗末すぎる。私はドコモユーザーであり、別にソフトバンクを擁護する気はさらさらないが、あまりにいい加減すぎる記事だ。まあこの記事のおかげで「アクセスチャージ」とか「ドミナント規制」のことについて調べて勉強になったから、そこはあまり言わんでおこう。

で、結局このSBのアクセスチャージが高いのは、私が最初に言ったように「弱者に対する補助金」というような理解で問題ないわけだが、実際にこの割高分が、どれだけ補助金としての役割を果たしているのかを計算しているエントリは、ブクマを確認した限りでは無かった。なので、私がやろうと思う。以下計算していくが、概算を求めているのであって、正確な数値を求めているわけではないので、端数はどんどん四捨五入するか端折っていく。

まず、1人が1日通話する平均時間は、7.5分らしい。

携帯電話やPHSの1日平均通話時間は7.5分--ヤフーバリューインサイトが調査

で、現在日本で契約されている携帯電話数は約1億台。

携帯電話シェアの推移

ちなみにここでシェアも書かれており、後で使うので一緒に記載しておく。

ドコモ 約50%  KDDI 約30%  ソフトバンク 約20%

とりあえず、これらの数字で、日本での1年間の携帯電話における総通話時間を出すことができる。

7.5分 × 365日 × 1億台 = 2734億5000万 分 

「分」で表すと数字がでかくなって扱いにくいので、時間(hour)に直すと、

2734億5000万 分 ÷ 60 分 = 45億6250万時間になる。

端数は端折って、日本の1年間の総通話時間を45億時間とする。次にこれを、携帯電話シェアに応じて振り分けるとする。細かには違いがあるかもしれないが、どこかのキャリアのユーザーだけが突出して通話時間が長いというのは聞いたことないし、また不自然だからだ。だとすると各キャリアの(自分の方からかけている)通話時間の配分はこうなる。

ドコモ 約23億時間  KDDI 約14億時間  ソフトバンク 約9億時間

この数値は、同キャリア同士の通話時間も含まれているから、それを除外しなくてはならない。それを除外する方法はこれもシェアによる。例えばKDDIはシェアが3割だから、総通話時間の3割は同キャリアへの通話であって、7割が他社への通話という計算だ。だとすると各キャリアの他社への通話時間はこうなる。


ドコモからKDDIへの通話時間         約7億時間
ドコモからソフトバンクへの通話時間      約4.5億時間 


KDDIからドコモへの通話時間         約7億時間
KDDIからソフトバンクへの通話時間       約2.8億時間


ソフトバンクからドコモへの通話通話      約4.5億時間
ソフトバンクからKDDIへの通話時間      約2.7億時間 


あとは、これらの時間にアクセスチャージをかければ、各々の支払料と受取料がわかる。一応念のために言っておくと、3社の支払料と受取料を合算したらプラスマイナスゼロになる。まあ当たり前だが。

で、アクセスチャージは最初に記載していた金額を、円以下は四捨五入して使う。
だから、

ドコモへのアクセスチャージは     11円/分

KDDIへのアクセスチャージは     13円/分

ソフトバンクへのアクセスチャージは  16円/分

先にこれらを(分)から(時間)hourに直すと、

ドコモへのアクセスチャージ      660円/1時間

KDDIへのアクセスチャージ      780円/1時間

ソフトバンクへのアクセスチャージ   960円/1時間  となる。


まずは、ドコモのアクセスチャージ支払料を求めてみよう。

KDDIへのアクセスチャージ料

7億時間 × 780円 = 5640億円

ソフトバンクへのアクセスチャージ料

4.5億時間 × 960円 = 4320億円

2つを合わせると、9960億円、約1兆円の支払い額になる。




次に、KDDIのアクセスチャージ支払料を求めてみよう。

ドコモへのアクセスチャージ料

7億時間 × 660円 = 4620億円

ソフトバンクへのアクセスチャージ料

2.8億時間 × 960円 = 2688億円

2つを合わせると、7308億円、約7000億円の支払い額になる。



最後に、ソフトバンクのアクセスチャージ料を求めてみよう。

ドコモへのアクセスチャージ料

4.5億時間 × 660円 = 2970億円

KDDIへのアクセスチャージ料

2.7億時間 × 780円 = 2106億円

2つを合わせると、5076億円、約5000億円の支払いになる。



で、これらを互いに支払いあうわけだから、これらを今から合算する。

まず、ドコモのアクセスチャージ料を合算すると、

KDDIからの受取      4620億円

ソフトバンクからの受取  2970億円  計 7590億円 
   
そして、支払い額が9960億円だから、

7590億円 − 9960億円 = −2370億円  



次に、KDDIのアクセスチャージ料を合算すると、

ドコモからの受取      5640億円

ソフトバンクからの受取  2106億円  計 7746億円

そして、支払い額が7308億円だから、

7746億円 − 7308億円 = 438億円



最後に、ソフトバンクのアクセスチャージ料を合算すると、

ドコモからの受取     4320億円

KDDIからの受取      2688億円  計 7008億円

そして、支払額が5076億円だから、

7008億円 − 5076億円 = 1932億円 となります。

これで3社のアクセスチャージ支払料が出ました。まとめるとこうなります。



ドコモのアクセスチャージ支払料      約2300億円

KDDIのアクセスチャージ受取料      約400億円

ソフトバンクのアクセスチャージ受取料   約1900億円



この計算が実際の数値に近ければ、ドコモだけがマイナスになって、その分をKDDIとソフトバンクが受け取っているということになります。ドミナント規制が意図していることからすればドコモだけがマイナスで、その分配金をKDDIよりソフトバンクの方が多く受け取っているこのケースは、特におかしくはないと思います。(もちろんドコモとKDDIがマイナスでソフトバンクだけがプラスというケースもあり得るかもしれません。)問題はその程度、つまり金額です。私にはこれが近似値なのかどうかはわかりません。まあ実際の数値からプラマイ50%以内の範囲なら合格だと私は思います。

一応念のためドコモの財務諸表を見てみると、

http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/ir/library/report/index.html

「最新資料」とあるpdfの29ページを見ると、連結財務諸表だが、P/Lが見れる。
ものすごく大雑把なので、営業費用の項目の勘定科目は4つしか無いのだが、恐らく「サービス原価」というのにアクセスチャージ料は含まれているのではないかと、勝手に推察している。年間のサービス原価は約7600億円。計算通りだとすると、その内の約3割がアクセスチャージ料ということになる。

また営業費用は合計で約4兆円である。ということは営業費用のうちの、約5%がアクセスチャージ料だということになる。決して安くはないだろうが、アクセスチャージの支払いが仮に全部無くなっとしてもそれほど携帯電話料金が安くなるとは思えない。ましてやソフトバンクの少し高いアクセスチャージ料を、ドコモやKDDIに近づけたぐらいではほとんど携帯料金には影響を与えないだろうと思う。

ちなみに、ドコモユーザー1台で1ヶ月に負担している平均アクセスチャージはどのぐらいになるだろうかというと、

2300億円 ÷ 5000万ユーザー ÷ 12ヶ月 = 383.3

約400円 その内ソフトバンクへのアクセスチャージは約八割だから、

400 × 0.8 = 320円  ということになります。

まあ、やはり割高分を是正した程度では、携帯料金は安くはならないだろうと思います。

ということで、私の結論は次のようになります。アクセスチャージの価格差はそもそも補助金のようなものであるから、ソフトバンクが不当にボッタクッているわけではない。仮にボッタクっていたとして、それを是正した所で、携帯料金はあんまり変わらないだろうと思う。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。



追記

アクセスチャージに関する考察(定性分析) 1/3
アクセスチャージに関する考察(定量分析) 2/3
アクセスチャージに関する考察(定量分析) 3/3